こんにちは!「野球くじ研究所」の所長、球研 所長(きゅうけん しょちょう)です。
「サッカーのtotoやバスケットボールのくじはあるのに、国民的スポーツの野球にはなぜないの?」
野球くじのニュースが出るたびに、こんな疑問を持つ方は多いと思います。2026年7月にNPBのオーナー会議で検討が了承されましたが、実は野球くじの話は、今回が初めてではありません。
今回は、野球くじがこれまで実現しなかった理由を、歴史の流れに沿って整理します。
この記事の結論
野球くじが実現してこなかった理由は、大きく3つです。①八百長や賭博をめぐる球界の苦い歴史、②法律の対象が限られていること、③球界内の慎重姿勢と合意形成の難しさ。そして今回の動きは、競技人口の減少など「野球振興の財源」という課題が背景にあります。
1. まずは年表で確認!野球くじをめぐる歩み
最初に、野球くじに関わる主な出来事を時系列で見てみましょう。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1946〜1950年 | 日本勧業銀行が野球の試合結果を使った宝くじを発売(計4回)。八百長への懸念などから1950年に廃止 |
| 1969年 | 西鉄ライオンズを中心とする八百長問題「黒い霧事件」が発覚 |
| 2015年 | 読売ジャイアンツの選手3人が野球賭博に関与し、無期の失格処分に |
| 2018年 | NPBと12球団がスポーツ振興くじの導入を検討。スポーツ議員連盟との交渉は折り合わず見送り |
| 2020年12月 | 法改正により、スポーツ振興投票(くじ)の対象にバスケットボールが追加 |
| 2026年7月 | NPBのオーナー会議が、「非予想系」に限った野球くじの導入検討を了承 |
こうして見ると、野球くじは「一度も考えられなかった」のではなく、何度も議論されては見送られてきたテーマだとわかります。
2. 理由1:八百長・賭博をめぐる球界の苦い歴史
最大の理由は、プロ野球が経験してきた八百長と賭博への強い警戒感です。
戦後すぐの野球くじも、わずか数年で終了
実は戦後間もない1946年から、日本勧業銀行(現在のみずほ銀行)が野球の試合結果を使ったくじを発売していました。第3回からは、試合の得点などを予想する形式になりましたが、八百長への懸念などから1950年に廃止されたと伝えられています。
1969年「黒い霧事件」の衝撃
球界に最も大きな傷を残したのが、1969年に発覚した「黒い霧事件」です。西鉄ライオンズの投手が暴力団の依頼で八百長を行っていたことが明らかになり、その後も関与する選手が次々と判明しました。報道によると、処分を受けた選手は合計19人にのぼり、そのうち6人が永久追放となっています。
事件の発覚から処分の内訳、その後の経過までは、黒い霧事件を詳しく解説した記事で整理しています。
事件の影響は処分だけにとどまりません。観客動員は大きく落ち込み、西鉄ライオンズは1973年に球団を手放すことになりました。「野球が賭けや八百長と結びつくと、球界そのものが揺らぐ」という教訓は、今も球界に深く刻まれています。
2015年の野球賭博問題
近年でも、2015年に読売ジャイアンツの選手3人が野球賭博に関与し、無期の失格処分を受けた問題がありました。こうした出来事が重なり、「野球を賭けの対象にしない」という姿勢が長く保たれてきたのです。
なお、野球協約には、故意に負けるような行為をした場合に永久失格とする厳しい規定があります。八百長は、プロ野球にとって最も許されない行為の一つです。
3. 理由2:法律の対象が限られている
2つ目の理由は、そもそも法律の対象になっていないことです。
日本のスポーツくじ(toto、BIGなど)は、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」に基づいて運営されています。この法律でくじの対象になるのは、もともとサッカーだけでした。2020年12月9日に公布された改正法で、新たにバスケットボールが対象に加わっています。
つまり、野球くじを実現するには、法律を改正して対象競技に野球を加える必要があります。法改正には国会での議論が欠かせず、球界内の意見がまとまらない限り、話を進めるのは難しい状況でした。

4. 理由3:球界の慎重姿勢と合意形成の難しさ
3つ目は、球界内での合意形成の難しさです。
2018年2月には、NPBと12球団が沖縄県那覇市で小委員会を開き、スポーツ振興くじの導入を検討しました。この会合では、導入に強く反対する球団はなく、検討を進めることで一致したと報じられています。しかし、その後のスポーツ議員連盟との交渉は折り合わず、導入は見送られました。
さらに、くじの方式をめぐる考え方の違いもありました。購入者が試合結果を予想する方式は、八百長の動機を生みやすいという懸念があります。選手会も、予想して賭けるベッティング型には反対の立場を示しています。オーナーと選手会の会談の様子は、初会談を解説した記事で紹介しています。

5. それでも今、なぜ議論が動いたのか
では、なぜ2026年の今、野球くじの検討が再び動き出したのでしょうか。
2026年7月16日のオーナー会議で、NPBはスポーツ振興くじの導入検討を了承しました。報道によると、背景には野球の競技者人口の減少や、中学校の部活動の地域移行といった課題があります。指導者の育成や競技の裾野を広げるための財源が必要になっているのです。
そこで今回は、八百長への懸念に配慮して、コンピューターが無作為に結果を選ぶ「非予想系」に限定する方針が示されました。この仕組みについては、非予想系の解説記事で詳しく説明しています。

海外では、賭けを解禁した国でも不正対策が続いています。事例を知りたい方は、海外の野球ベッティング事情の記事もどうぞ。
何のためのくじなのか、収益がどこへ行くのかは、野球くじの収益の使い道の記事で整理しています。
6. これから乗り越えるべき課題
ただし、導入が決まったわけではありません。発売時期や対象試合、購入方法などは、現時点で未定です。主な課題は次の3つです。
- 法改正:対象競技に野球を加えるための法改正が必要
- 八百長・不正対策:選手や審判、球団関係者の購入制限や情報管理の徹底
- 球界の合意:オーナー側と選手会の足並みをそろえること
過去に何度も見送られてきた経緯を考えると、実現までには時間がかかる可能性があります。
7. よくある質問
- 野球くじは過去にも発売されたことがありますか?
-
戦後の1946年から1950年にかけて、日本勧業銀行が野球の試合結果を使ったくじを計4回発売したと伝えられています。その後、八百長への懸念などから廃止されました。
- 野球くじはいつから始まりますか?
-
2026年7月に検討が了承された段階で、発売時期は決まっていません。法改正などの手続きが必要なため、すぐには始まらない見込みです。
- 野球くじは「野球賭博」と同じですか?
-
同じではありません。野球くじは国の法律に基づく公営の仕組みで、収益はスポーツ振興などに使われます。野球賭博のような違法な賭けとは別のものです。
今の状況を全体像で確認したい方は、野球くじ総合まとめで、決まっていること・未定のことを一覧にしています。
8. まとめ:球研 所長の考察
最後に、今回のポイントを整理します。
- 野球くじは過去に何度も議論されてきたが、そのたびに見送られてきた
- 理由は「八百長・賭博への警戒」「法律の対象外」「球界の慎重姿勢」の3つ
- 黒い霧事件(1969年)や野球賭博問題(2015年)が、球界の警戒感を強めてきた
- 今回動き出した背景には、競技人口の減少や部活動の地域移行という財源の課題がある
- 非予想系に限定する方針だが、導入の時期は未定
球研所長として感じるのは、野球くじの議論は、単なる「新しい楽しみ方」の話ではなく、野球の未来をどう支えるかという問いでもあるということです。過去の教訓を踏まえて、慎重に、そして透明性を持って議論が進むことを期待しています。引き続き、最新情報を追いかけていきます。
