こんにちは!「野球くじ研究所」の所長、球研 所長(きゅうけん しょちょう)です。
野球くじの話題では、「海外では野球に賭けられるのに、日本はなぜ慎重なの?」という声をよく聞きます。
この記事では、アメリカ・韓国などの制度と、MLB(米大リーグ)で起きた不正への対策を整理します。そのうえで、日本で検討されている野球くじ(非予想系)との距離を考えていきます。
この記事の結論
- アメリカでは2018年の連邦最高裁判決をきっかけに、スポーツ賭博を認めるかどうかを各州が決める形になりました。MLBは提携事業者を置きつつ、2025年11月に「1球ごとの賭け」へ上限を設けています。
- 日本では、スポーツへの賭けは賭博罪にあたるのが原則です。野球くじは、報道によると「非予想系」に限って導入が検討されており、発売時期は現時点で未定です。
- 海外で問題になった不正は、投手の1球など「選手が結果に関われる賭け」で起きています。試合結果を予想しない非予想系は、この点で性格が違います。ただし、リスクがゼロになるわけではなく、制度の詳細も未確定です。
※この記事は2026年10月17日時点で確認できた報道・公的情報にもとづきます。制度は動く可能性があるため、最新情報は各公式発表をご確認ください。
1. 早見表:米国・英国・カナダ・韓国・日本を比べる
まず、各国の位置づけを表で並べます。「野球くじとの距離」は、日本で検討中の非予想系と比べた球研 所長の整理です。
| 国・地域 | 賭けの位置づけ | 運営のかたち | 日本の野球くじとの距離 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 2018年以降、合法にするかは各州が決める | 州の免許を受けた民間事業者が中心 | 遠い(民間・予想型が中心) |
| 英国 | 賭けは免許制で規制される | 賭博委員会が民間事業者に免許を出す | 遠い(免許制の民間事業) |
| カナダ | 2021年に1試合ごとの賭けを州が扱えるよう法改正 | 州が運営または免許を出す | やや遠い |
| 韓国 | 野球を対象にしたスポーツくじがあり、売上は公的な財団のデータで示されている(報道) | 財団のデータが出る公的な枠組み(球研 所長の整理) | 近い(公的な枠組みという点) |
| 日本 | 賭博罪が原則。公営競技などは特別法で例外 | 野球くじは非予想系で検討中(未確定) | ― |
用語の整理は、用語解説の記事で詳しく書いています。toto・BIGとの違いは、toto・BIGと野球くじの違いの記事もあわせてどうぞ。
2. アメリカ:2018年に何が変わったのか
アメリカの転機は、2018年5月14日の連邦最高裁判決です。
それまで、1992年制定の連邦法(PASPA)が、ほとんどの州でスポーツ賭博を認めない仕組みを支えていました。最高裁はこの法律を違憲と判断し、合法にするかどうかは各州が決められるようになりました。
判決前、MLBをはじめ主要リーグは「法律を残してほしい」という立場でした。しかし判決後は流れが変わり、現在のMLBは公式のスポーツブック提携先を持っています。
一方で、選手や球団関係者への賭博禁止ルールは、従来どおり厳しく残っています。「市場は開いたが、中の人は厳しく縛る」というのが、いまのMLBの基本姿勢です。
アメリカは民間事業者が免許を受けて運営する形で、日本が検討している公的な野球くじとは仕組みが別物です。
日本の議論を考えるときは「海外=賭け放題」ではなく、「国ごとに制度の土台が違う」と押さえておくのが安全です。


3. 不正は起きた:ローズ事件から「1球賭けの上限」まで
賭けを解禁した米国でも、不正との戦いは続いています。ここでは、MLBの対策を因果でたどります。
3-1. 基本は「Rule 21」
MLBには、全球団のクラブハウスに掲示されているとされるルール「Rule 21」があります。
自分が職務に関わらない試合に賭ければ1年間の出場停止、自分が職務に関わる試合に賭ければ永久追放が目安です。
過去には、1919年のブラックソックス事件で8人が永久追放され、1989年にはピート・ローズ氏が追放されました(ローズ氏の追放処分は、死去後の2025年に解除されています)。
なお、日本にも1969年の「黒い霧事件」があります。日米の事件の比較は、黒い霧事件の記事で詳しく書いています。
3-2. 2024年:マルカーノ選手の永久追放
2024年6月、MLBは内野手のタクピタ・マルカーノ氏を永久追放にしたと発表しました。
発表によると、野球に対する387件の賭け(合計15万ドル超)があり、うち25件は、自身が所属する球団の試合でした。
ほかの4選手は1年間の出場停止です。この4人は、所属球団の試合には賭けていませんでした。
3-3. 2025年:1球ごとの賭けと起訴
2025年11月、クリーブランド・ガーディアンズのエマニュエル・クラセ投手とルイス・オルティス投手が、米連邦当局に起訴されました。
報道によると、投球の球速やボール・ストライクを対象にした賭けで、賭け側に有利になるよう投げたとされています(容疑は、いずれも本人たちが否認しています)。
賭け側が得た金額は、少なくとも約45万〜46万ドルと報じられています(報道により幅があります)。
両投手は無罪を主張しています。報道によると、裁判は2026年11月2日に始まる予定です。結論が出ていない点は、断定を避けて見守る必要があります。
3-4. 対策:1球賭けは1口200ドルまで
この起訴を受けて、2025年11月10日、MLBと提携スポーツブックは対策を発表しました。
1球ごと(ピッチレベル)の賭けは、1口200ドルが上限です。さらに、複数の賭けを組み合わせるパーレー(組合せ)の対象から外されました。
発表によると、この対策は米国市場の98%超をカバーするとされています。
つまり、米国は「解禁して管理する」道を選び、問題が起きるたびにルールを足しているわけです。
4. 身近な話:大谷選手の元通訳の事件は何が違う?
日本の読者になじみが深いのが、大谷翔平選手の元通訳だった水原一平氏の事件でしょう。
報道によると、水原氏は違法賭博に関連して銀行詐欺罪と虚偽の納税申告の罪を認め、禁錮57か月の判決を受けました。
注意したいのは、この事件では野球への賭けは問題になっていない点です。
報道によると、水原氏は野球に賭けたとは疑われていません。
そのため、先ほどのマルカーノ氏やクラセ投手の件とは性質が違います。野球くじの議論とは、混同しないようにしましょう。
5. 韓国・英国・カナダはどうなっている?
5-1. 韓国:野球を対象にしたスポーツくじ
韓国では、報道によると、野球を対象にしたスポーツくじの売上が2025年に1兆5400億ウォンとなり、過去最高になりました(前年は1兆3900億ウォン)。
2026年9月の報道で、公的な財団のデータをもとにした国会議員の分析として紹介され、議員は過度な賭けを防ぐための監督を求めています。
日本の野球くじも「収益を競技振興に回す」という公的な枠組みが議論されています。
その意味で、韓国は日本に最も近い海外の例のひとつです。ただし、制度の細部までは確認できていないため、ここでは売上の動向と議論の紹介にとどめます。
5-2. 英国:免許制の民間事業
英国では、賭博委員会(Gambling Commission)が、賭けを含むギャンブル事業者を免許制で規制しています。
根拠は2005年の賭博法(Gambling Act 2005)です。
目的は、犯罪との結びつき防止、公正性の確保、子どもや脆弱な人の保護の3つです。
5-3. カナダ:2021年に1試合ごとの賭けを解禁
カナダは、2021年に刑法を改正しました。
それまで認められていたのは複数試合を組み合わせる賭けだけで、1試合ごとの賭けを州が扱えるようになったのは改正後です。改正法は2021年8月27日に施行されました。


6. 日本はどうか:賭博罪が原則、野球くじは検討中
日本では、スポーツを対象にした賭けは刑法185条の賭博罪にあたるのが原則です。
例外は、競馬などの公営競技で、特別法にもとづき適法とされています。
スポーツ振興投票(toto・BIG)では、JリーグとBリーグの1試合ごとの投票も認められています。
野球については、2026年7月のNPBオーナー会議で、スポーツ振興くじに野球を加える検討が始まりました。
報道によると、NPB側は導入するなら「非予想系」に限ると説明しています。発売時期や商品設計は、現時点で未定です。
法律面は法改正の解説記事、選手会の姿勢はオーナーと選手会の会談の記事、導入が見送られてきた歴史はなぜ今まで野球くじが無かったのかの記事で解説しています。
なお、海外の賭け事業者を日本から使う行為について、法律事務所の資料では「賭博罪にあたる」との見解が示されています。
個別の判断は弁護士などの専門家に確認してください。当サイトは、海外サイトの利用を勧めません。


7. 海外で起きた問題を、非予想系に当てはめるとどう見えるか
最後に、海外の事例を日本の野球くじの設計に照らします。以下は球研 所長の整理で、制度が未確定である以上、あくまで現時点の見方です。
| 海外で問題になったこと | 非予想系だとどうなりそうか | 注意点 |
|---|---|---|
| 1球ごとの賭けで、投手が結果を操作(クラセ・オルティス事件) | 試合や投球の結果を予想して買う設計ではないため、同じ形の不正は起きにくい | 抽選の仕組み次第で、別のリスクは出うる |
| 選手自身が野球に賭ける(マルカーノ事例) | 選手の賭博禁止ルールは別の問題として残る | くじの種類にかかわらず対策が必要 |
| MLBと賭け事業者の公式な提携 | 日本の野球くじで民間事業者とどう関わるかは未定 | 詳細は報道待ち |
| 民間事業者が運営 | 日本は公的な枠組みでの検討が前提とされる | 運営主体は現時点で未確定 |
ここで大切なのは、「だから非予想系なら安心」と言い切らないことです。非予想系でも、八百長が関わる余地がゼロとは言えません。この点は、黒い霧事件の記事でも触れています。
8. よくある質問
- 海外では野球に賭けるのは合法ですか?
-
国や地域で違います。アメリカは2018年以降、各州が合法にするかを決める形になりました。韓国では野球を対象にしたスポーツくじの売上が報じられています。日本は賭博罪が原則で、公営競技などが例外です。
- MLBの選手は野球に賭けてもいいのですか?
-
認められていません。MLBのRule 21では、自分が職務に関わらない試合に賭けると出場停止、関わる試合に賭けると永久追放が目安とされています。
- 日本から海外の賭けサイトを使うと違法ですか?
-
法律事務所の資料では、賭博罪にあたるとの見解が示されています。個別の判断は専門家に確認してください。当サイトは利用を勧めません。
- 日本の野球くじは、海外のように試合結果を予想して賭けるものになりますか?
-
報道によると、現時点では「非予想系」に限って検討されています。予想して賭けるタイプではないとされますが、発売時期や詳細は未定です。
- 1球ごとの賭けは今も行われていますか?
-
2025年11月、MLBと提携スポーツブックが、1球ごとの賭けを1口200ドル上限、パーレーの対象外とすると発表しました。最新の状況は各公式発表をご確認ください。
9. まとめ:球研 所長の考察
海外の事例からわかるのは、「解禁した国ほど、不正対策に追われている」ということです。
アメリカは市場を開いた一方で、Rule 21の運用や1球賭けの上限など、ルールを足し続けています。
日本の野球くじは、現時点で非予想系に限って検討中です。
決まっていないことが多いため、断定は禁物ですが、海外の教訓は「何を賭けの対象にするか」が制度の安全性を左右する点にあります。続報が出たら、この記事も更新していきます。
参考にした情報源
- Ballpark Digest「U.S. Supreme Court Clears Way for State-Regulated Sports Betting」(2018/5/14)
- Wikipedia「Murphy v. National Collegiate Athletic Association」
- Baseball Egg「Baseball’s Long Road to Embracing Sports Betting」(2026/5/21)
- MLB.com「MLB, sportsbook partners announce limits on pitch-level wagers」(2025/11/10)
- KSAT(AP)「MLB bans Tucupita Marcano for life for betting on baseball」(2024/6/4)
- NPR「MLB pitchers Emmanuel Clase and Luis Ortiz charged with taking bribes to rig pitches」(2025/11/9)
- InGame「Judge Denies Motion To Dismiss Count 1 In Clase, Ortiz Case」(2026/9/9)
- CBS Sports「Baseball gambling scandals」
- 英国 Gambling Commission「What we regulate」
- Fasken「Bill C-218 receives royal assent」
- Canada Gazette「SI/2021-56」
- Herald「Jin Sun-mi calls for oversight to prevent excessive betting」
- 西村あさひ法律事務所「スポーツ・ビジネス・ロー・ニューズレター」(2024/5)
- 熊本日日新聞「プロ野球も『野球くじ』検討開始 オーナー会議」
